宿題を出さない理由

 

「ちゃんと聞いててえらいね」

 

と褒められます。

中には、褒めすぎて

 

「賢い」

 

とまで言う保育士もいます。

 

聞いているか聞いていないかは、聞いた後、行動できるかどうかでわかります。

言われた通りに動かなければ、聞いていなかったということです。

 

幼稚園、保育園で

 

「いい子」

 

として扱われた子どもは、聞かれたことに対して

 

「黙る」

 

という選択をしがちです。

これまで静かに大人しく座っていれば、いい子と言われ、賢いとまで言われてきた成功体験の蓄積があります。

少しでも間違う可能性のあることに対しては、黙っておいた方が得です。

 

そのことを親に伝えたとしても、

 

「家では喋りますけど」

 

「私の前では喋りますけど」

 

と、反応は芳しくありません。

 

黙っているだけで褒めてくれる時期は、人生の中では短いです。

むしろ、黙っているだけでは損をする時期の方がよっぽど長いです。

せめて、喋らなくても行動しないと、それは聞いていたことにはなりません。

 

聞いたら、知ったら、行動することです。

行動することで、

 

「ちゃんと聞いてましたよ」

 

というメッセージを発信できます。

 

子どもにとってマイナスになる成功体験もあります。

 

「喋らないでよかった」

 

「黙っていてよかった」

 

「何もしないでよかった」

 

この成功体験に浸りきった子どもが、

 

「積極的ですね」

 

「前向きですね」

 

と、面接で評価されるでしょうか。

 

積極的に

 

「黙る」

 

という選択をしている子どもです。

黙れば褒められ、静かにしておけば賢いと言われてきた5年間の人生です。

 

「ここぞと言うときには、うちの子も喋ると思います」

 

そうですか？

その自信はどこから？

あなたが

 

「黙っててえらいね」

 

と、子どもを褒めて成功体験をつくってあげた張本人ですよね？

 

「あなたに与えた成功体験、実はまちがいでした！ごめんなさい！」

 

と、テレビのドッキリみたいにネタばらしできません。

 

静かにした方がいい場面はもちろんあります。

それはそうです。

ただ、静かにしていたというだけで、加点される場面はあまりありません。

うるさくて減点されることはあっても、喋らないからといって、高得点には結びつきません。

 

評価されるのは出力です。

何を話し、何を書き、何を表現したかです。

 

「あなたって、どんな考えしてるの？」

 

と聞かれたことに対して答えることです。

そこで出力できる姿勢をつくるためには、

 

「人前で間違い、それでも怒られない経験」

 

をすることです。

間違えるのが嫌な子どもは、間違えて怒られた経験があるからです。

嫌なのですから、間違えない道を選びます。

それは、

 

「何もしない」

 

という道です。

 

ですが、成長とは、できないことができるようになるプロセスをたどります。

できていない姿を見られることを嫌がるより、あっけらかんとできない姿を見せて、誰かに修正の手助けをしてもらった方がよっぽど成長は早いです。

 

間違っていいです。

できなくていいです。

間違う姿、できない姿を見て指導したいので、宿題は出しません。

できない姿を見て、どこでどんな考え方をしているか見て、指導したいからです。

間違い、理解し、できるようになることが自信になります。

間違ってもいい環境で学べば成長は早いですし、余計な心配をしなくていいので心も明るくなります。