問われているのは大人の見る力。子どもが困る体験は成長につながります。

「困る」を経験し、乗り越えることで成長できます。

親の中には、子どもが困る機会を与えない人もいます。

子どもが試行錯誤しているのを見て、

 

「子どもが困ってるじゃないですか！どうして助けないんですか！」

 

と怒鳴る人もいます。

同じ子どもの様子を見て、

 

「子どもが自分で一所懸命考えて、えらいですね」

 

と言う人もいます。

 

子どもが課題に取り組んでいる時間は、見る人が見れば「困っている時間」です。

「かわいそうな時間」です。

それを

 

「かわいそうに。こうやってやるんだよ」

 

と教える人は、優しい人、思いやりのある人、子どもの気持ちを察することができる人のように見えます。

もちろん本人も、

 

「そうでしょ〜。もっと褒めて笑」

 

と思っています。

 

一方こちらは、

 

「だからか」

 

と思います。

 

困った時、誰かが急いで助けに来てくれないのが不愉快で納得いかない子どものそばには、とても優しい親や担任の先生がいます。

ですので、「自分で乗り越えよう」とか「どうやったらうまくいくんだろう」とか、そんな気持ちが子どもの中にありません。

 

気持ちがない人に成長はありません。

できるようになりたい「欲」を持っていないのです。

 

王子様、お姫様に生まれた人なら、それでもいいです。

召使いにやってもらえばいいからです。

 

そうでなければ、自分で少しずつ困った思いをし、乗り越える体験をして、レベルアップしていくのが真っ当な生き方です。

漫画やゲームの世界ではないので、特殊なアイテムも出てきませんし、本気を出したらIQが何倍にもなるということもありません。

人知れず困り、人知れず考えて、人知れず乗り越えて、また別の課題に向き合っていくという、地味なことをコツコツやっていくしかありません。

 

体験に来られた方から

 

「この子、すごいですね」

 

と言われることがあります。

そう言っていただいて嬉しいですが、

 

「その子に合った方法で、時間をかけて、やっとここまで来たんです」

 

というのが本当の気持ちです。

「すごい」とか「できる」と思われている子どもは、同級生の何倍も困る体験をしています。

困る体験をしている中で、自分で必死で考えるからこそ、成長できます。

そういう子どもには、幼さが感じられません。

乗り越えていくには、シビアな目になり、シビアな耳になる必要があります。

幼稚なままではいられません。

困るからこそ、

 

「よく見ないと」

 

「ちゃんと聞いとかないと」

 

と思うようになります。

 

 

見てなくても、「見せて」と言えば、何度でも見せてくれる。

聞いていなくても、「もう一回言って」と言えば、何度でも言ってくれる。

 

 

子どもの要求に喜んで答えている大人は、自分に酔っているだけです。

この大人が、子どもの見る力の成長を奪い、聞く力をつけないようにしています。

 

優しそうに見える人は、実際は優しくもなんともありません

見なくて聞かない子どもが学校生活を満足に送れると思っているのでしょうか。

 

その大人に、少しでも先のことを見通す力があれば、さすがにそんな残酷なことを子どもにはしないはずです。

見る力、聞く力は一生使う大事な能力です。

それを優しい言葉と態度で育てないのは、残酷な人間です。

ただ、その見極めができる人は少ないですし、ほとんどの場合、

 

「未来の子どもの成長を願う人」

 

より

 

「今、助けてくれる優しい人」

 

の方が勝ってしまうので、ますます見ない子、聞かない子は出てくると思います。

 

困る体験をしている最中、脳は活発にはたらいています。

 

「困ってる！最悪！」

 

と思わず、

 

「良い経験してるわ〜」

 

と思って欲しいものです。

まわりから見ると困っているように見えても、本人は意外と楽しんでいるものです。

子どもの姿を見て、どう解釈するか、大人の見る力が問われているのです。

 

新潟大学附属幼稚園に今年も全員合格しました。